中小企業庁長官 安藤久佳

 平成31年の新春を迎えるに当たり、謹んでお慶びを申し上げます。
安倍内閣の発足以降、名目GDPは約54兆円増え、就業者数は約251万人拡大し、
中小企業においても賃上げ率が4年連続で増加するなど経済の好循環が浸透し
始めています。
 しかしながら、こうした景気回復が既に高度成長期の「いざなぎ景気」を超
える戦後2番目の長さとなって続いている一方で、全国の7割に当たる3,000万人
を超える従業員の雇用を支えるなど、日本経済の屋台骨である中小企業・小規
模事業者の皆さんは、経営者の高齢化や人手不足といった構造変化に直面して
います。
中小企業庁としては、足下の好景気に慢心することなく、中小企業・小規模事
業者の皆さんが構造変化を乗り越えて持続的に発展できるよう、以下の分野に
重点的に取り組んでまいります。

 第一に、経営者の高齢化は大きな課題です。2025年には経営者の6割が70歳
を超え、多くの中小企業が廃業する結果、約650万人の雇用が失われるとの分
析もあります。実際、事業者数は年間10万者程度のペースで減少しつつあり、
足下では358万者まで減少しています。こうした「待ったなし」の課題に対し
て、早め早めの円滑な事業承継は有効な解決策の一つです。
 このため、平成30年度税制改正では、事業承継時の贈与税・相続税の支払い
負担を実質ゼロにするなど、法人の事業承継税制の抜本的な拡充を行いました。
お陰様で足元の申請件数は昨年度の約10倍に迫る勢いです。来年度は更に個人
事業者の事業承継を後押しするため、10年間の時限で、土地、建物、機械・器
具備品等の承継時の贈与税・相続税の支払い負担を実質ゼロにする制度を創設
します。これらの措置により事業承継税制は完成しました。
今後は、これらの税制も積極的に活用いただきながら、早め早めの円滑な事業
承継を全国で実現していくことが重要です。

 第二に、深刻な人手不足に直面する中、生産性の向上は喫緊の課題です。
 また、働き方改革を進めて行く上でも、生産性向上は必要不可欠です。2020
年4月には長時間労働規制が、2021年4月には同一労働・同一賃金が、それぞれ
中小企業にも適用されます。中小企業・小規模事業者の皆さんの生産性向上に
向けて全力で取り組んで行く所存です。
 具体的には、中小企業・小規模事業者の皆さんが生産性を向上させられるよ
う、「ものづくり・商業・サービス補助金」や「IT導入補助金」による設備投
資・ITツール導入支援、「持続化補助金」による販路開拓支援等を行ってきま
した。引き続き切れ目なく支援を行えるよう、支援措置を講じていきます。

 また、今年10月に予定されている消費税率引き上げ、軽減税率制度の実施に
伴い、中小企業・小規模事業者に混乱を生じさせないよう、しっかりと準備を
進めていくことが必要です。
 消費税率引上げに伴う駆け込み需要や反動減を抑える需要平準化策に万全を
期すことは当然ですが、これに加えて軽減税率制度の実施や転嫁対策にもしっ
かりと取り組みます。
 具体的には、中小企業団体、関係省庁及び業界団体とも連携しながら、相談
窓口の設置や説明会の開催、パンフレットの配布といった周知・広報を行って
まいります。また、軽減税率対応を推進するため、レジ・システム補助金を用
意しておりますが、中小企業団体等の意見を踏まえ、1月から補助率の3/4への
引き上げや対象事業者・補助事業の拡大等を行い、さらに中小企業・小規模事
業者の円滑な対応を後押ししていきます。加えて、全国に409名の転嫁Gメンを
配置して、情報収集や立ち入り検査、指導等を行っており、来年度からは転嫁
Gメンの増員も含めて、転嫁対策に係る監視・取り締まりの強化を一層進めて
いきます。

 昨年は平成30年7月豪雨、北海道胆振東部地震、相次ぐ台風被害など多くの
自然災害に見舞われた年でした。
引き続き復旧・復興に向けた支援策を講じていくことは勿論ですが、中小企業
・小規模事業者の事前の防災・減災対策を進めることの重要性を改めて強く認
識しました。このため、立法措置も視野に中小企業の強靭化をトータルで支援
してまいります。

 本年は5月に新たな元号に改元されます。こうした節目の年である本年が、
中小企業・小規模事業者の皆様にとって大きな飛躍の年となるよう心より祈念
し、新年のご挨拶とさせていただきます。