~日本の住宅内装をカラフルに変える~

◆造船業から撤退した日立造船、音響事業を切り離したパイオニア、カメラ事
業を売却したコニカミノルタ…。事業再生の一環として、「祖業」(創業事業)
から撤退して生き残りを図った企業群だ。これら大企業のスケールには及ばな
いが、祖業である内装工事業から撤退し、壁紙の販売事業に特化することで業
績を反転させた中小企業が大阪にある。

◆フィル(大阪市大正区)の濱本廣一社長は、15歳で内装工事の世界に入り、
23歳で壁紙など内装を請け負う職人として独立した。27歳となった2000年に同
社を設立し、壁紙の通販サイト「壁紙屋本舗」を開設。しばらくは、床や壁紙
を張る工事仕事とネット通販の2本柱で会社を経営していた。ところが2008年
のリーマンショックを契機に、内装工事業は赤字に転落。「過当競争による受
注価格の下落により、忙しいのに儲からない」(濱本社長)状態に陥った。

◆当時、濱本社長は「誰よりも早く、安く、きれいに白い壁紙を張るだけの人
生で終わりたくない」と感じていた。日本の住宅内装の99%以上は白系の壁紙。
「さまざまな色・デザインで出来た面白い壁紙を世に広めたい」と思い定めた
濱本社長は、壁紙の販売に特化し、内装工事業から撤退することを従業員に告
げた。職人たちは猛反発した。従業員の半数近くに当たる職人7~8人のほとん
どが辞め、壁紙通販部門の従業員だけが残った。内装工事からの撤退に伴い、
年間売上高7億円超の半分以上に当たる4億円超の売り上げがなくなった。

◆それでもネット通販を強化するため、英語とフランス語、中国語と韓国語が
分かる外国人をそれぞれ1人ずつ採用し、半年間、ネットを通じて海外の壁紙
情報を徹底的に調べさせた。当初は、日本製壁紙を輸出するのが目的だった。
ところが、調べれば調べるほど「日本製のクオリティーでは輸出できない」こ
とが分かった。そこで海外製壁紙の輸入販売に方針転換し、片っ端から海外の
壁紙メーカーとコンタクトし、輸入代理店契約を次々と結んでいった。海外企
業によると、これまでも日本企業に売り込んでいたが、「こんな派手な柄は日
本人には受けない」と断られるケースが多かったという。

◆2011年に開設した輸入壁紙専用の通販サイト「WALPA(ワルパ)」は、今で
は欧米を中心に約150ブランド・2万種類以上の壁紙を取り扱う。また、東京都
・恵比寿、銀座、大阪市大正区の3カ所に展開する実店舗では、実物大のカラ
フルな壁紙に触ることができ、ワークショップを定期的に開いて壁紙の張り方
も教えている。「特殊な糊を使い、誰でも簡単に張ったり、剥がしたりできる」
と話す濱本社長。夢は「日本国民全員に壁紙を張らせたい」である。(編集子)