~コロナ契機に自社開発製品に挑む~

◆新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、それまでの下請け生産一辺倒の
経営から、自社独自の製品開発に取り組んだ町工場がある。41台の手袋編み機
と27台の靴下編み機を備え、手袋の一大産地である香川県東かがわ市の大手
メーカーなどにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する大勝製造所(高知県
土佐市)である。

◆現社長の大勝俊作氏の父・武士氏が創業したのは1985年。香川県の大手手袋
メーカーからの要請を受けて下請けを始め、最盛期の95年頃は11人の従業員を
抱えた。だが外国製品の輸入増や暖冬の影響を受け、5~6年前に家族だけの経
営に縮小させて存続を図った。ところが新型コロナが追い打ちをかけ、受注量
は一気に激減。例年なら手袋の生産の“最盛期”を迎える5月は、前年に比べて
90%も減少した。

◆対策として、1日の稼働時間を3分の1程度に短縮し、資金繰り面でコロナ対策
融資や持続化給付金を活用した。ただ、それだけで活路は開けない。ある時、
「新型コロナには手洗いや消毒が効果的」というニュースを見てひらめいた。
「吊り革やドアノブ、手すりなどに直接触ることに抵抗があるニーズは大きい」
と考え、独自開発の「抗菌手袋」に挑戦することにした。

◆早速、繊維会社に問い合わせたところ、抗菌・制菌・防臭効果のある糸があ
った。以前から「銅に抗菌・抗ウイルス効果がある」ことは知っており、この
糸と銅繊維を一緒に編み込めば商品化できると考えた。より多くの人にとって
使いやすく、安価で、ストレスがかからない点を重視し、試行錯誤しながら商
品化に漕ぎつけた。

◆公的検査機関で抗菌性能を試験した結果、洗濯10回後も新品と同等の抗菌性
能を維持した。通電効果のある銅繊維を使っているため、手袋を付けたままで
スマートフォンや現金自動預払機(ATM)を操作できるなど、さまざまな作業が
可能だ。とはいえ、下請けに特化してきた町工場であり、自社に販売ノウハウ
はない。そこで高知県産業振興センターや高知県よろず支援拠点の支援を受け、
商品パッケージの作成や販路開拓を進めることにした。

◆高知県土佐市の「ふるさと納税」の返礼品に追加され、10月上旬にオンライ
ンショップを開設した。また首都圏市場での販売を目指し、近く東京・銀座の
アンテナショップ「まるごと高知」で取り扱いを始める予定だ。高知県産品の
販路開拓で取引のある大手雑貨店や百貨店にも抗菌手袋を売り込む計画だという。
「以前から下請けだけの経営では存続が厳しいと思いつつも、なかなか行動に
移せなかった」と大勝社長。中小企業の下請け脱却は数十年前からの課題とい
われて久しいが、新型コロナが背中を押した格好だ。(編集子)