~有志の基金で再開したミニシアター~

◆竹石研二氏は、2002年7月に埼玉県深谷市で設立したNPO法人市民シアター・
エフの代表者。江戸元禄年間創業の「七つ梅酒造」の酒蔵跡を改装した映画館
「深谷シネマ」を運営している。国内外の映画やドキュメンタリーフィルムを
地域住民に比較的廉価で提供していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に
伴う政府の緊急事態宣言や県の要請で4月上旬から約2カ月も休業を余儀なくさ
れ、収入が途絶えてしまった。

◆新型コロナの影響が日増しに増大する中、閉館の危機に瀕している全国の小
規模映画館「ミニシアター」を救済しようと、深田晃司氏と濱口竜介氏の2人
の映画監督が立ち上がる。両氏が発起人となって募ったクラウドファンディン
グプロジェクト「ミニシアター・エイド基金」は映画ファンの共感を呼び、
1カ月で約3万人から3億3000円が集まるなど全国から手厚い支援を受けた。支
援金は「深谷シネマ」にも充当され、運営資金の一部が賄われた。

◆さらに、同館にゆかりのある深谷出身の映画監督入江悠氏の呼びかけで寄付
も集まった。「ミニシアター・エイド基金」の資金と合わせて、当面の人件費
・経費は賄える見通しが立ったことから、映画館の再開に踏み切った。

◆再開に伴っては、来場者の検温とアルコール消毒液の設置と館内の常時換気
に加えて、観客をはじめ来場者が直接触れる個所を中心に営業開始前だけでな
く、営業中も消毒作業を実施して感染対策を徹底。客足も徐々に戻りつつある。

◆竹石氏は「『市民の芸術文化の享受の機会を創り、市民の社会活動・文化活
動への参画を図るとともに、ミニシアターをはじめとする映画文化の普及と発
信を通して、市民の生活文化の向上とまちづくりに寄与する』というNPO法人
の目的を果たせなかった。市民の憩いの場として親しまれていると自負してい
たが、休業要請で経営が悪化しただけでなく、映画という楽しみを提供できな
くなってしまったことが何より悔しかった」と、最も苦しかった当時を振り返
る。

◆「映画を愛する地域住民の寄付などのおかげで、当館と地域の絆が一層強ま
った。シネコンにはない映画文化を提供するという地域のミニシアターの存在
意義を再確認できた」とコロナの“副産物”を前向きに捉えている同氏。
「深谷シネマを単なる映画上映の場にとどまらず、日本の素晴らしい映画文化
を全国に発信できる地域の拠点に変えていきたい」と、コロナ禍をバネに飛躍
を誓う。同館の名誉館長で、今年4月に他界した大林宣彦監督の追悼イベント
なども実施していくという。(編集子)