~衛星軌道上のゴミ除去めざす宇宙ベンチャー~

◆人類が宇宙開発を始めて半世紀以上。多数の衛星やロケットの打ち上げが行
われ、役割を終えた衛星や故障した部品、爆発で発生したロケットの破片など
が置き去りにされている。これが宇宙ゴミ(スペースデブリ)で、その数、
推定1億2800万個。地球の周りを秒速7キロメートル、弾丸の約10倍以上の速さで
移動しており人工衛星などに衝突すると大きな被害をもたらす。天気予報や災害
対策、GPSシステムも人工衛星なしには成り立たない。「ゴミ」掃除は喫緊の
課題だ。

◆こうした宇宙ゴミの除去サービスに取り組んでいるのがアストロスケール
(東京都墨田区)だ。岡田光信社長は元財務官僚で、IT企業や米系ファンド
などのキャリアを経て、2013年5月に起業した。

◆ゴミをどうやって取り除くか。仮説を組み立てるため、岡田社長は関連論文
700本に目を通し、300本を精読した。論文に付いている著者の連絡先のメール
アドレスに質問を送り、仮説を携えて各国の学者を訪ね歩き、1年間で世界を
3度巡った。宇宙空間で光るいろいろなもののなかから「ゴミ」を見極め、近
づいて相対速度をゼロにしてつかまえる。その後に回転速度もゼロにする。
ゴミをつかまえ、安定させ、大気圏に入れて燃やす技術も必要だ。試行錯誤の
末、衛星の打ち上げ前に金属製軽量プレートを付け、磁石でゴミを捕獲する方
法にたどりついた。

◆東京・錦糸町に自社工場を建て、人を増やし資金も日本円で約160億円調達
した。同社の世界初スペースデブリ除去実証実験衛星「ELSA―d (End of Life
 Service by Astroscale.)」はいま、最終試験中。2021年3月、はカザフスタ
ンのバイコヌール宇宙基地からソユーズロケットで打ち上がる。ロケットの
打ち上げ成功率は90%前半で失敗の確率はゼロではないが、必ず打ち上げを
成功させて軌道上で実証実験を終えたいと念じている。

◆宇宙空間に漂うゴミに近づいて行って捕まえる自社技術が活かせれば、衛星
寿命延長サービスも提供できる。静止軌道上には衛星が約500あるが、打ち上げ
15年目くらいに燃料が切れ寿命を迎える。だがそうした衛星のなかには正しい
位置に軌道制御してやればまだ使えるものがある。一方でゴミを除去し、他方
で正しい位置を保持して寿命を延ばす「軌道上サービスで食っていく」考えだ。
「10年後にはデブリ除去をあたりまえにしたい。朝生ゴミを出したら昼にはな
くなっていたみたいな感じに」。宇宙の掃除屋をめざす岡田社長はそう言って
笑った。(編集子)