~サーキットからオフィス市場に“参戦”~

◆ブリッド株式会社(愛知県東海市)は、レーシングカー用に独自開発した
バケットシート(体を包むように固定して走行安全性を高めた座席)を公道
走行用にもアレンジして販売しているモータースポーツファンには知られた
シートメーカーだ。代表取締役は高瀬嶺生氏。地元愛知県で唯一自動車科の
ある公立工業高校を卒業後、トヨタ系カーディーラーと自動車部品の問屋で
経験を積んで81年、30歳で創業した。

◆自社工場で職人が手づくりする「日本人の体形にフィットした長時間運転
でも疲れにくい」設計・構造のシートは、製造物責任法に定められる10年の
期限を超えたアフターサービスとともに高く評価されている。同社の技術は、
一部の大手自動車メーカーのオプションシートをOEM生産していることからも
最高水準にあることが理解できる。バケットシートの販売数と国内モーター
スポーツにおける装着率ともに業界ではダントツの実績。年間生産1万脚、
年商8億円の2割は、アジアを中心とする海外での売り上げだ。

◆シートは338種類、シートレールは800車種以上をラインナップしている。
経営上、必ずしも高効率とはいえない多品種微量生産に挑んでいるが、これは
ユーザーの要望にできる限り応じる製品開発姿勢の表れだ。ブリッドシートの
装着に伴って取り外した純正シートをオフィスチェアとして再利用するための
キャスターキットを一部販売することで、ユーザーの買い替え意欲を刺激する
工夫も凝らしている。

◆長時間運転でも腰の負担が少なく疲れにくい設計と構造を「健康」「快適」
とマーケティングした成果で、トラックやキャンピングカーにも搭載実績が
ある。自動車以外ではスポーツ関係施設を開拓し、サッカーJリーグのガンバ
大阪、ジュビロ磐田などの選手用ベンチシートを納入している。

◆さらに昨年は、脱カーシートメーカーを掲げてオフィスチェア市場に参入。
コクヨ、オカムラやドイツの有名メーカーと競合し得るシートメーカーに飛
躍しようと事業展開している。高瀬社長は「オフィスチェアにフルバケット
シートでチャレンジすることで、新しいトレンドを創出したい。座ることで
デスクワークやミーティングが楽しくなるシートを提供する」と意気込む。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って増大したテレワーク需要をも取り
込む構えだ。

◆同社は、世界的な知名度があり、オフィスシート用のアレンジでも需要と
人気のあるドイツのレカロ社と競合するまでに成長した。両社はサーキット
のみならず、市場でも激しい“デッドヒート”を繰り広げている。高瀬社長は、
市場の急拡大が期待されているeスポーツ(競技化した対戦型コンピューター
ゲーム)に使う「ゲーミングチェア」でも商機を見出し、新たな理論と設計
で専用シートを開発してブランド化していく方針だ。(編集子)