~新ブランドのサンプル送る「トランクショー」で成果~

◆宮城興業(山形県南陽市)は1941年、宮城県仙台市創業の靴メーカーだ。戦
前は軍靴を手掛け、疎開先の山形で戦後に民需へ転換。1969年に革靴の本場・
英国のバーカー社と技術提携を結び、高級靴の代名詞とされる「グッドイヤー
ウェルト製法」による革靴などを全国500店以上の取引先に提供している。

◆「多品種・小ロット生産」が可能なため、他社ブランドの受託製造(OEM)の
ほか、近年は自社ブランドのEC展開にも力を入れていたが、新型コロナウイル
ス感染症の影響で多くの取扱店が休業し売上が大幅に減少。OEMも販売店の見
込みが立たないことから受注減となった。ダブルパンチで今年5月以降の工場
稼働率は前年同期比で半減。取扱店舗の営業再開後も前年に比べ7割程度で推
移している。

◆そこで工場稼働減で空いた時間を活用し、社長や職人を講師に、従業員向け
のスキルアップセミナーを開講。技術の習得や維持、次の商品開発のための新
たな技術開発に取り組み、新規で自社ブランドを5つ創出した。カタログや
SNSを活用したプロモーション方法も見直し、マーケティングを再考した。

◆手応えを得たのは「宮城興業版・トランクショー」だ。トランクショーとは
本来、特定ブランドのスタッフがトランクに入る程度の自社製品を持ってホテ
ルなどの会場を訪れ、顧客を招待して行う展示・受注会のことだが、コロナ禍
で県を跨いだ営業ができないため、新たに立ち上げた新ブランドのサンプルを
トランクに詰め、ショー開催を希望する店舗に送り、ミニ展示会的なイベント
を行ってもらった。

◆コロナ禍で余裕がない店舗は、お金をかけずに売上を上げる方法を模索して
いた。トランクショーなら在庫リスクを抱えず、既存顧客への新提案のほか、
新規顧客獲得のための幅広いブランドを提案できる。当社はSNSを使った周
知活動での支援を行い、サンプルの行き帰りの送料を負担する。店舗側にはほ
とんどリスクが無い。9月に開始したところ、全国約500店の取引先から引
き合いが相次ぎ、いまでは毎週どこかの店で何らかのブランドのトランクショー
が開催されている。

◆その結果、取引先1店舗あたりの売上が増加し、新規の取扱店を開拓できた
し、当社の新ブランドを知ってもらうことで既存取扱店舗の取扱いアイテムが
増加した。取扱店舗とのコミュニケーションが密になり、ニーズをつかむこと
もできた。なによりの収穫は営業マンが現場に行かなくても売上を上げられる
ことが分かったことだ。

◆トランクショーの成果を機にインターネットやIT技術を活用したデジタルマー
ケティングに力を入れ、非対面型のコミュニケーションを強化し、激化するビ
ジネス環境に対応できる会社を目指すつもりだ。(編集子)