~西陣織の美しさを世界に広めたい~

◆岡本織物(京都府)は西陣織の正絹金襴の製造・販売会社だ。8人の従業員
全員が親族で職人の家内制手工業で、明治期に現社長の曽祖父が職人として西
陣織を始め、1988(昭和63)年に株式会社にした。製品の西陣織金襴は寺社仏
閣で宝物を飾る布やお坊さんの袈裟などに使われているが、自社オンライン
ショップで西陣織のマスクや布地、小物も販売している。

◆新型コロナ感染症の影響は同社でも大きかった。2020年春以降、得意先で予
定されていた法要が無くなるなど注文が大幅に変更となってしまったのだ。ピ
ンチだったが、政府が「アベノマスク」を配るというニュースを見て、マスク
の供給が少ない今がチャンスだと考え、同年年4月1日から西陣織マスクを製
作した。自社のオンラインショップで販売したら月100万円ほどの売り上げに
なった。11月には大阪府の百貨店・大丸梅田店の催事にも初出店し、定価14,800円
の最高級マスクを40枚近く売った。状況に応じて自在に製品を織れる職人の技
術があったし、マスク製造から販売まで、社内の意思決定が迅速にできたから
だ。

◆「もちろん課題も少なくない」と同社の岡本圭司社長の妻で専務の岡本絵麻
さんは話す。同社の職人は70代後半から40代、高齢化は否めない。後継者をど
う育てるか。織機・道具の老朽化もある。社内で使っているパソコンも最新型
ではないから、模様デザインソフトがパソコンのOSに対応できないなどの問題
が発生する。商品の撮影はレンタルスタジオで行っているが、借料が高価すぎ
るのも悩みだ。商品は絹製品で水分や湿気に弱いから、台風や洪水など近年相
次いでいる自然災害も脅威だ。こうした課題に対応が追い付いていないのが現
状だ。

◆それでも職人たちが何日もかけて織り出す文様は、吉祥文様あり雪の結晶あ
りと多種多様で、金糸銀糸を織り込んだ布は美しい色合いだ。岡本専務は「い
まはコロナ禍もあり、西陣織のような質の高い良いモノづくりは地盤沈下して
いるようにみえるが、需要は確実にある」と見る。「インスタグラムなどSNS
上で発信するなど上手くPRして、Web上で綺麗な画像をアップすれば注文数を
増やすことができるだろう」と意気軒高だ。そのうえで「いまは国内市場だけ
だが、いずれは自社製品を世界の市場で販売したい」とも話す。日本が誇る伝
統工芸品である西陣織金襴の美しさを、新しいデザインと商品群で世界に広め
たいという夢があるからだ。その第一歩としてオンライン展示会の開催を準備
中という。(編集子)